ニューヨークで活躍するメイクアップアーティストseiyaさんへインタビューしました!
ニューヨークを拠点に、映画やファッションの現場で活躍するメイクアップアーティスト・Seiyaさんにインタビューしました。海外でキャリアを築くまでの道のり、言葉や文化の壁をどう乗り越えてきたのか、そして未来のアーティストへのメッセージなど、美容学生にとって大きなヒントとなるお話をたっぷりお伺いしてきました。
Seiyaさんの基本情報
Seiyaさんは2012年に渡米し、現在はニューヨークを拠点に活躍するメイクアップアーティストです。
『VOGUE(USA)』『ELLE Magazine (USA)』『Harper’s BAZAAR』などのファッションエディトリアルを手がけ、セレブリティのヘアメイクやNYFW(ニューヨークファッションウィーク)・MET GALAなどその活動は多岐にわたります。
得意のスタイルは「ノーメイクアップメイクアップ」「ナチュラルデューイメイクアップ」「エディトリアルメイクアップ」「セレブリティメイクアップ」。ナチュラルさと洗練を両立させた独特の表現で、世界中から高い評価を受けています。

NINJAとの繋がり
今回Seiyaさんにインタビューをお願いしたのは、NINJAスタッフの知人を通じてご縁をいただいたことがきっかけでした。
日本からNYへ渡り、言葉や文化の違いを乗り越えて現地でプロとして大活躍を続けるSeiyaさんから日本で働くヘアメイクさんたち、海外進出を目標としている美容学生さんたちへキャリアのモチベーションにつながるお話を聞きたいという思いから、今回のインタビュー企画が実現しました。
世界で活躍するメイクアップアーティスト、Seiyaさんにインタビュー!
ここからは、Seiyaさんへのインタビューをお届けします。
日本の美容学生の皆さんへのメッセージもいただいていますので、ぜひ最後までご覧ください。
では最初に、Seiyaさんの自己紹介をお願いします。
はじめまして、Seiyaです。現在はニューヨークを拠点に活動しています。もちろんニューヨーク以外でも仕事をすることはありますが、基本的にはニューヨークがベースです。
仕事の内容としては、ファッションマガジンの撮影をはじめ、レッドカーペットのメイクを担当することもあります。また、「ハウスコール」と呼ばれる、クライアントの自宅やホテルに行ってパーティー前にメイクをするような仕事も多いですね。所要時間はだいたい1時間半くらいです。ウェディングの仕事も依頼があれば対応しています。
最近では、写真撮影に加えて、ビデオの仕事もふえてきており、スチールとビューティープロダクトやファッション、ミュージックビデオなどの仕事にも携わってます。ただ、長編映画のような大規模な作品ではなく、短めのショートムービーが中心です。
さらに、『VOGUE』『Harper’s BAZAAR』『OFFICIAL』『Highsnobiety(ハイスノバイエティー)』『Office Magazine(オフィスマガジン)』といったカルチャー寄りのファッション誌でも多くの仕事をさせていただいています。広告系の仕事ももちろん行っていますし、とにかく「メイク」に関わることなら何でもやってきたなという感じです。
最近のお仕事の中で、特に印象に残っているものはありますか?
最近でいうと、シカゴ・カブスの今永昇太選手のヘアメイクを担当させていただいた仕事が印象に残っています。日本の某ブランドとのコラボ企画で、いわゆる「スポーツ選手×ブランド」のタイアップ案件でした。野球選手にメイクをする機会はなかなかないので、とてもユニークで面白い経験になりました。
あとは、以前ついていたボスがセレブリティ専門だったこともあって、僕自身もセレブリティ関連の仕事をちょこちょこやっています。ただ、ファッション系のメイクアップアーティストの中には、セレブリティの仕事をあえて避ける人もいるんですよね。
というのも、ファッションの現場ではスタイリスト、ディレクター中心にチームで仕事を進めることが多いんですが、セレブリティ案件では本人がすべてをコントロールするケースも珍しくなく、ディレクションの進め方がまったく違うんです。「こうしてほしい」「これはNG」といった細かな指定が多くて、アーティスト側の自由度が少ないというか。
でも、やっぱり収入面を考えると、セレブリティやインフルエンサーの案件は安定しています。ファッションだけに偏ると収入が不安定になることもあるので、僕自身はそのバランスを意識して仕事を選ぶようにしています。
最近特に強く感じているのは、スキルだけでなく、コミュニケーション能力の重要性です。とくにセレブリティやインフルエンサーとの仕事では、相手が「心地よく」いられるかどうかがとても大事で、信頼関係を築けるかが仕事の質にも直結してくると思っています。ちゃんと会話をして、その人が安心できる空気をつくること。これは、メイクと同じくらい大切なスキルだと感じています。
それから、ニューヨークならではの多様性も、この仕事の魅力のひとつです。人種や文化が異なるさまざまな人たちと、毎週のように違う現場で一緒になるので、毎回刺激を受けています。新しい人との出会いや、新しい発見が常にあること。それがあるからこそ、自分はこの仕事をずっと楽しく続けられているのだと思います。

「本当にやりたいこと」を見つけて動き出した大学時代
メイクアップアーティストを目指したきっかけは?
僕の母親は、もともとエステティシャンをしていました。自宅で施術をしていたこともあり、小学生だった僕は、その現場をいつも家の中で見て育ちました。新しい化粧品を試すとき、僕の顔が実験台になることもよくあって。最初は嫌だったんですけど、だんだんそれが当たり前になっていって、「男が化粧品を使うのは変だ」という感覚は、正直まったくありませんでした。
中学生の頃、友達と遊びに行くときに日焼け止めを塗ろうとしたら、「男なのに? 何それ?」って反応が返ってきたんです。そのときに、「あ、うちの家はちょっと特殊なんだな」と気づきました。僕にとっては普通だったけど、世間とは感覚が違っていたんですよね。
高校時代、通学電車でよく見かける他校の子がいて、ある日その子の雰囲気がガラッと変わっていたんです。「あ、たぶん今日メイクしてるな」って気づいた瞬間、人ってメイクでこんなにも変わるんだと衝撃を受けました。その後、当時の彼女にアナスイのコフレセットをプレゼントして、それを使ってデートに来てくれたんですけど、すごく綺麗で。あのときに「メイクの力」を強く感じたのを、今でもよく覚えています。
とはいえ、その時点ではまだ「メイクアップアーティストになろう」とまでは考えていませんでした。なんとなく大学に進学して、でも1年目の終わりごろ、「これ、本当に自分のやりたいことなのかな?」という疑問が湧いてきたんです。ちょうどその頃から東京に出るようになって、ファッションや美容の業界で活躍している人たちと出会うようになりました。その人たちが本当に楽しそうで、「自分もこういう世界で生きてみたい」と思うようになったんです。
当時はIKKOさんなどがテレビに出始めていて、「メイクアップアーティスト=かっこいい職業」というイメージも広がりつつありました。ファッションも美容も好きだった僕にとって、「メイクなら両方の世界に関われるかもしれない」と思い、そこから一気にリサーチを始めました。
母はすぐに応援してくれましたが、父は普通のサラリーマンだったこともあり、「男がメイク?」とまったく理解してくれず、家族会議になりかけました。そこで僕は、業界について徹底的に調べて、プレゼンすることにしたんです。「どんな職種があるのか」「男性でも働けるのか」「収入はどれくらいなのか」など、すべてまとめて説明したんです。そして最終的に、大学2年を終えたタイミングで中退を決意し、翌年ヘアメイクの専門スクールに進学しました。
その頃ちょうど『nuts』や『BLENDA』などのギャル雑誌が流行っていて、そういった雑誌に載っているメイクアップアーティストたちがすごくかっこよく見えました。スクールで学んだあと、「もっと化粧品の知識を深めたい」と思い、美容部員を目指したのが、美容の世界への本格的なスタートでした。
ニューヨークで挑戦しようと思った理由や、その決断に至ったエピソードがあれば教えてください。
東京では、韓国の化粧品ブランドに約1年半勤めたあと、オーガニック系のコスメを扱っている会社に転職しました。そこは世界中のコスメブランドが集まっているような環境で、ドイツやアメリカなど、ヨーロッパのメーカーの方々が実際に来日して、現場でトレーニングしてくれることもあったんです。そして、海外の人たちと接する機会が増えていくなかで、「もっと海外のことを知りたいな」と強く思うようになっていきました。
もともと僕は、ニューヨークを舞台にした映画ばかり観ていて、会社の人たちにも「いつか海外に行きたいです」ってずっと話していたんです。あるとき、ニューヨークに旅行で訪れたのですが、そのときの衝撃が本当にすごくて。街のエネルギーや、人種も文化も違う人たちが混ざり合っている感じがとても刺激的で、「この街でメイクアップアーティストとして挑戦してみたい」と強く思いました。
その後、ファッション系のパーティーに積極的に顔を出すようになっていきました。そんな中、青山で開催された海外セレブも集まるようなパーティーに偶然参加する機会があったんです。すると、そこになんと、Diorのメイクアップディレクターであるピーター・フィリップス本人が来ていて。思い切って、「どうやったらアシスタントになれるんですか?」と話しかけたら、彼が「今ニューヨークにいるから、来たら訪ねておいで」と言ってくれたんです。もうその一言で、「これはタイミングだ。絶対に行くしかない」と思って。そこから本気で動き始め、ニューヨークに行く決意を固めました。

渡米後に驚いたことや苦労したことはありましたか?
まず最初に思ったのは、「ニューヨークの街って、意外と汚いな」ということでした。日本って、どれだけ綺麗で安全だったんだろうって、海外に出て初めて気づかされたんです。
それに、日本にいるときは「自分は日本人だ」なんてあまり意識することはありませんでしたが、海外に出ると、常に「日本人」というフィルターを通して見られる感覚があります。「日本人って礼儀正しいよね」なんて言われることも多くて、「あ、そうなんだ」と改めて気づかされることがたくさんありました。
カルチャーショックという点でいうと、日本では「こうすべき」と思い込んでいたことが、アメリカでは「別にそうしなくてもいいんだ」と感じる場面が多かったです。最初は戸惑いましたが、そういう「縛り」が少しずつほどけていって、気持ちがラクになっていきました。
アメリカに来てからの自分は、すごく「人間っぽく」なれた気がします。いい意味でナチュラルになって、自分自身にもっとフォーカスできるようになったというか。日本ではどうしても周囲を気にしすぎていたなと、渡米して初めて実感しました。
ニューヨークで最初に経験した大きなチャンスやキャリアの転機を教えてください。
あのときは本当に夢のようでしたね。アメリカで活躍しているパット・マグラスさんのもとで、インターンをさせてもらっていたんですが、彼女はファッション業界では世界一とも言われている伝説的なメイクアップアーティスト。昔、日本で雑誌などを通して見ていた憧れの存在ですよ? そのオフィスで自分が働いているなんて、信じられませんでした。毎日がまさに『プラダを着た悪魔』そのままのような世界で、ドラマはあるし、刺激だらけだし、本当に多くの学びがありました。
ただ、仕事をしていくなかでだんだん気づいたんです。すごい芸術的な分野のほうもあってすごいアートっぽいメイクや、ペインティングみたいなのもあったり、それはそれで好きなんですけど、もっとパッションがでてくるメイクのフィールドってあるのかもしれないなと思い始めて。
僕自身は、もっとナチュラルで、その人本来の魅力を引き出すようなメイクが好きで、アーティストとしての方向性が少し違うなと感じたんです。そして、「他のジャンルも見てみたいな」と思うようになりました。
その後、インターンが終わって次にアシスタントについた方が、実は超有名なセレブリティ系のメイクアップアーティストで。最初はよく知らなかったんですが、あとからそのすごさを知って驚きました。アメリカでバリバリやっているベトナム系カナダ人の方だったんです。
その方の現場が当時の僕にはすごい刺激的で。特に印象に残っているのが、初めてのアシスタント現場のこと。指定されたスタジオに少し早めに行ったら、ヘアメイクブースの前でヨガマットを広げてストレッチしている女性がいて。「うわ、この人すごく早いな、プロダクションの人かな?」と思いながら、とりあえず挨拶したんです。そしたら、その人が振り返って……なんとセレーナ・ゴメスだったんですよ。一瞬パニックになりましたが、現場なので平静を装って「Nice to meet you」とか言いながら握手して。その瞬間、「あ、自分、本当にこの世界にいるんだな」って実感しました。
その後も、映画で見たことのあるような人と、翌週には一緒に仕事をすることになったりして。毎回が刺激的で、まだ夢見心地というか、ふわっと浮いているような感覚でした。しかもボスはアメリカ人ではなく、ベトナム系カナディアン。海外からアメリカに渡って成功している姿は、「アジア人でもここまで行けるんだ」と思わせてくれました。
それまで自分にとっては「夢の世界」だったものが、少し現実に近づいた気がしたんです。実際にその方と働いてみて、「もしかしたら、自分にもチャンスがあるかもしれない」と思えたんですよね。ずっと遠くに感じていた世界が、ちょっとだけ手が届く場所に感じられた瞬間でした。

アシスタントになったきっかけは?
たまたま、メイクアップアーティストのファーストアシスタントをしていた日本人女性がいて、その方が忙しくなったタイミングで、2人目のアシスタントを探していたんです。そこで僕に声をかけてもらえたのがきっかけでした。
今でもニューヨークでは日本人アシスタントが海外のアーティストに人気なんです。理由は、日本人は指示をしっかり聞いて、真面目で文句を言わないと思われていたからです。時間を守る、空気を読む、対立を避けてうまく立ち回るなど、いわゆる日本人特有の「気遣い」が評価されていたんだと思います。あと、「自分がやります!」って自分から動ける人が多くて、アシスタントとしては扱いやすいと見られていました。
とはいえ、現場はかなり厳しかったです。特にそのアーティストは気分屋なところがあって、現場ではピリつくこともしばしば。でも僕は、そういうのをあまりパーソナルに受け取らないタイプだったので、「今は機嫌悪いんだな」くらいの感じで流すことができたんです。だから、他の人がすぐに辞めてしまうなか、僕は続けられたのかもしれません。
ある日、その方から「アシスタントになりたい人なんていくらでもいる。だけどクビにしないのは、あなたのパーソナリティが好きだから」と言われたんです。その言葉がすごく印象に残っています。スキルももちろん大切ですが、特にセレブの仕事は周囲との信頼関係や人間性がとても重要なんだと、改めて感じました。
海外でキャリアを築くための「リアルな視点」と「心得」
ニューヨークで活躍するのに必要なマインドセットは?
まず、マインドセットとして一番大事だと思うのは、「いつでも準備ができている状態でいること」です。ニューヨークでは本当に何が起こるかわからないし、突然チャンスが舞い込んでくることも多いんですよね。
例えば、語学学校に通っていたとき、授業中に「今日の午後、急だけどインタビューマガジンの撮影があるんだけど来れる?」って連絡が来たんです。「行きたい! でも授業を休んだら出席日数が足りない……」とかなり悩みましたが、とりあえず「YES」と返事をしてから考えました。そんなふうに、チャンスが来たらまずは掴みにいく。そのあとどうするかは、そのとき考えればいい。それくらいのフットワークの軽さは、ここではすごく大切だと思います。
とはいえ、ずっとそんな緊張感の中で走り続けていたら、さすがに疲れてしまうので、今は自分のペースも大事にするようにしています。仕事がなかなか来なかったときも、あまり落ち込まずに「これはタイミングが合わなかっただけ」と、フラットに受け止めることがすごく大切だと感じています。
それから、人と比べすぎないことも意識しています。最初の頃は、同じ時期に渡米して自分より活躍している人を見ると、正直焦る気持ちもありました。でも、タイミングも個性も人それぞれで、自分にしか出せないものがあると信じるようになりました。セルフコンフィデンス――自分への信頼が、とても大事だと思います。

スキル面ではどんな力が求められますか?
スキル面で言うと、もちろん技術力は必要ですが、ニューヨークには本当に多種多様な人種・文化・肌の色・体の特徴を持った人たちがいます。日本にいたときには出会ったことのないタイプの肌や骨格にも対応しなくてはならず、最初は少し戸惑うこともありました。
でも今では、その人の肌色や骨格に関係なく、「どうやってその人の魅力を引き出すか」という視点でメイクを見るようになりました。
それから、ニューヨークはテストシュートの機会がとても多く、スキルアップには本当に良い環境です。モデルやフォトグラファーも、ポートフォリオを作るために日々動いていて、「みんなで一緒に作品を作ろう」というマインドで取り組むことができます。
日本では、モデル代などをみんなで出し合ったりして、一回のテストで費用が結構かかると思うのですが、こちらはモデル代はほぼかからず、フォトグラファーがだいたい負担してくれるので、ヘアーとメイクさんは日本よりかはもう少しテストしやすい環境だと思います。
ロサンゼルスとニューヨークの業界にはどんな違いがありますか?
ロサンゼルスはハリウッドやTV業界の影響が強くて、全体的にメイクは濃いめの傾向があります。たとえば「ナチュラルメイク」って言っていても、実際はがっつりコントゥアが入っていたり、リップもオーバーリップだったりするんですよね。本人たちは「これがナチュラル」って言うんですけどニューヨーク基準で見たら全然ナチュラルじゃない。
逆にニューヨークは、もっとナチュラル志向です。特にウェディングの現場では「できるだけ素の自分でいたい」と考える人が多くて、あまり作り込みすぎないメイクを好む傾向があります。「キレイにはなりたいけど、自分の顔はちゃんと残したい」という感覚ですね。だから、メイクのアプローチもまったく違います。
ロサンゼルスから来たモデルさんなんかは、ニューヨークで撮影していてもメイクがすごく濃かったり、髪をすごく触りたがったりして。「あ、この子マイアミとかロサンゼルスから来たな~」って、わりとすぐ分かります。
それから、ロサンゼルスの人たちはビジネスマインドが強いというか、リアクションも大きくて「私はここにいる!」ってアピールをはっきりする文化があると思います。一方、ニューヨークはもっとドライでサバサバ、いい意味でナチュラルでいる感じ。「面白くなければ笑わない」みたいな。そのあたりは性格にも出てますよね。
ロサンゼルスだとセレブ系の仕事も多いですし、ヘアメイクさん自身が「自分もインフルエンサーになりたい」っていうタイプの人も多い。みんな華やかで、見せ方をすごく意識してる印象です。どちらが良い・悪いではなくて、単純にカルチャーとして違うんだと思います。
日本とニューヨークではメイクの業界やスタイルに違いはありますか?
結構違いますね。日本って、まず「流行」っていうのがすごく強いんです。それに加えてK-POPの影響もあって、みんなが「こうなりたい」っていう、ある種の理想像が割と似ている気がします。顔立ちを似せたがる傾向もあるし、「可愛いが最強」という価値観がトレンドとして定着している感じですね。一方、ニューヨークでは「可愛い」よりも、「綺麗になりたい」「かっこよく」「グラマラスに」「セクシーに」っていう方向性が強い。そこが日本とはまったく違います。
実際、どこにお金が動いているかを見ても、日本では「可愛い」メイクに需要が集中しているけれど、ニューヨークではもっと大人っぽい美しさや、自信に満ちたスタイルの方が評価されていて、そういう方向性がビジネスにも直結しています。こうした違いは、文化的な価値観の差にも表れているような気がします。
たとえば、海外では「綺麗で自立していそうな女性」が魅力的に映るけれど、日本では「可愛くて親しみやすい女の子」がモテるという感覚が根強い。だからメイクも、日本では「目を大きく」「可愛く」「幼く」見せるという方向になりがちですが、ニューヨークでは「骨格を出す」「立体感を出す」「強さを演出する」といった作り方が主流です。
業界の働き方にもかなり違いがあります。日本から来たクルーと仕事をすると、「これOKですか?」って聞いても「はい、大丈夫です」と返ってくる。でも、本当に大丈夫なのか分からないことが多いんですよね。ニューヨークだと「That’s amazing!」「Love this!」みたいにリアクションがはっきりしているので、こちらもやりやすいです。
それから、日本ではまだまだアシスタントの立場が低いというか、「見習い」感が強い印象です。無給だったり、立ちっぱなしだったり、何も聞かずに黙って従うのが当たり前だったり。でもニューヨークでは、アシスタントも立派なチームの一員として見られます。
まだ当時のボスのアシスタントをし始めての時、仕事中ボスが椅子に座っていて、僕がずっと立っていたら「なんでずっと立ってるの?疲れるでしょ、私が立たせてるみたいに見えるから座りなよ」って言われたこともありました。ちゃんとアシスタントも、人として扱ってくれます。そこが大きな違いだと思います。
チャンスをつかむために意識していることは?
僕がアメリカに来たのは2012年なんですが、ちょうどその頃ってInstagramが出始めたくらいで、まだ「インフルエンサー」って言葉もあまり知られていなかったんですよね。当時はやっぱり、スキルやポートフォリオがしっかりしている人が上に行く時代でした。でも今は、完全にSNSの時代。特にInstagramが重要で、どれだけ自分の作品を「見せるか」が大事になっています。そこで自分をどうアピールするかが、そのまま仕事に直結してくるんです。
僕自身は今フリーランスで活動していますが、仕事の6〜7割はInstagram経由です。DMで「あなたの作品見ました、気に入っています。一緒にお仕事しませんか?」って連絡が来たりします。たとえば以前、まったく知らない方から「ハワイでウェディングをやるんですが、メイクお願いできますか?」って突然DMが来たことがありました。しかもその方、以前別のサロンでやったときにすごく不満だったらしくて、「もっとファッション寄りのメイクがしたい」と。それでトライアルをして、結果的にハワイに呼んでもらったこともあります。SNSって、本当にチャンスの宝庫だと思います。
今は、ポートフォリオも「開いた瞬間にその人がどんなスタイルか分かる」ことが重要。もはやSNS自体がポートフォリオですよね。それに加えてよく言っているのが、「会ったときだけじゃなく、相手がスマホを開いたときに、自分の存在を思い出させられるか」がすごく大事だということ。たとえば「メイクやってます」と自己紹介しても、翌日スマホを開けば、他のメイクさんの投稿が山ほど流れてくる。だからストーリーでもリールでも「私はここにいるよ!」って発信を続けないと、すぐに忘れられてしまうんです。
特にニューヨークは、ものすごいスピードで人も情報も流れていくから、ぼーっとしてたら一瞬で埋もれてしまう。だから、ボスにも「SNSは常にONにしておけ」って言われていました。これは本当に大切なことだと思います。
今はTikTokでバズって仕事につながっている人もたくさんいるし、結局InstagramとTikTokって連動してるので、どちらかで火がつけば、もう一方も自然と伸びていく。静止画で「魅せる」ならInstagram、プロセスや技術を「見せる」ならTikTok。たしかにメイクアップって、最終の仕上がりを写真で見せることが多いけれど、最近はその「過程」を見せた方が信頼にもつながるし、差別化にもなる。だから、この2つのプラットフォームは今の時代、本当に欠かせないですね。
ニューヨークで活動する中で「やりがいがある」と感じる瞬間はありますか?
はい。今でも心に強く残っている経験がひとつあります。
あるとき、アメリカの奴隷制度時代を描いた映画を観る機会がありました。内容があまりにも強烈で、アメリカの歴史や社会について改めて深く考えさせられ、個人的にもすごく感動した作品でした。
その映画にはルピタ・ニョンゴ(Lupita Nyong’o)が出演していて、彼女がちょうどブレイクした頃でもありました。30代前半くらいで一気に注目を集め、一躍トップアクトレスとなった方です。
そして、映画を観た数週間後、なんと現場で彼女とご一緒することに。僕はアシスタントとして入っていたんですが、少しだけ映画の話をさせてもらったときに、彼女がこんな言葉をかけてくれたんです。
「たとえスタートが遅くても、自分の中にやりたいって気持ちがちゃんとあれば、必ずそれに近づける。ちゃんと現実になっていくものよ」
すごく短い言葉だったんですけど、自分の心にガツンと響きました。映画の中で見ていた存在が、今目の前にいて、自分に向かってそう言ってくれるなんて……。とてもじんときました。
ただのアシスタントだったけど、その瞬間、「あ、自分はこの業界にいてよかったな」って心から思えたんです。やっぱり同じフィールドに身を置いていれば、いつか必ず誰かが自分のことを見てくれる。そう信じられるようになった出来事でした。

困難や迷いを乗り越えて手に入れた「学び」と「成長」
これまでの中で特に苦しかった時期はいつですか?
一番大変だったのは、やっぱり「ビザの問題」ですね。これは本当に大きかったです。特にアメリカでキャリアを積んでいくうえで、ビザのステータスは避けて通れない問題だと思います。
僕も最初は学生ビザで渡米して、そこから就労ビザに切り替えるまでに、時間もお金もかかりましたし、精神的にもとても辛かったです。最初にお願いしていた弁護士とは2年くらいやり取りを続けましたがうまくいかず、2人目の弁護士に変えて、ようやくうまくいったという感じでした。
ビザの問題って、なかなか表には出しにくいんですが、特に同じ国出身の人たちの間ではけっこうセンシティブな話題でもあって。「あの人はステータスある」「ない」みたいな空気感があって、ちょっと引け目を感じたり、聞きづらかったりしますよね。日本にいたら考えなくていいようなことでも、海外ではそれがすごく大きな壁になるんです。
でも、そのぶん、自分にとってはすごく成長のきっかけにもなりました。ビザを取るって本当に大変なことだけど、それを乗り越えたことで、ちょっとやそっとのことでは折れなくなったというか。「あれを超えたんだから、次もきっといける」という、メンタル面での強さがついた気がします。
その状況をどのようにして乗り越えましたか?
支えになったのは、やっぱり周りの人たちですね。特にアメリカで出会った友達や、いろんな国から来た移民仲間たちの存在が大きかったです。
移民同士って、助け合う文化がすごく根付いていて、「あ、こんなふうに助けてくれるんだ」「なんでこんなに優しくしてくれるんだろう?」って思うことが何度もありました。人間って、本当に1人じゃ生きていけないんだなと、心から感じました。
もちろん、そのとき付き合っていたパートナーの存在も大きな支えでした。でも、それ以上に、移民として頑張っている仲間たちがいてくれたからこそ、自分も踏ん張れたんだと思います。「この人たちに恥ずかしくないように、自分もちゃんと返したい」という気持ちが、今も原動力になっています。
最初からやり直せるとしたら、変えたいことはありますか?
もし最初からやり直せるとしたら、やっぱりSNSにはもっと早く、力を入れて取り組んでおけばよかったなと思います。正直、あまり後悔するタイプではないんですが、やっぱり今の自分って、過去の積み重ねでできていると思うんですよね。だからあえて言うなら、もっと早い段階でInstagramなどをちゃんと活用して、自分の作品や想いを発信していたら、もう少し違った展開もあったかもしれないなと感じます。
もうひとつは、自分をもっとちゃんと認めてあげること。たとえば何かひとつ達成したときに、「すごいな自分」って素直に思う。それが昔はあまりできていなかったんです。特に日本の文化では、「いやいや、まだまだです」って謙遜するのが当たり前だったりしますよね。でも、そればかりだと、自分の価値に気づくタイミングが遅れてしまうこともある。
だから、最初からやり直すなら、「やったことはちゃんと認めて、自分をちょっとずつでも褒める」っていうマインドをもっと早いうちから持ちたいなと思います。それって結局自信にもつながるし、「自分ってここまで来たんだな」と思えるだけでも、次の一歩を踏み出す力になると思うんです。
Seiyaさんから未来のアーティストへメッセージ
日本には、Seiyaさんのようなグローバルなアーティストになりたいヘアメイクアップアーティストがたくさんいます。そんな未来のアーティストへメッセージをお願いできますか?
まずは、とにかく一度来てみるのが一番だと思います。旅行でも短期でもいいので、実際にその土地に足を運んで、自分の肌で空気を感じてみてほしいです。そのときの、「自分はここにフィットするな」とか「ここは合わないかも」という感覚を大事にしてもらえたらと思います。
今はSNSやネットでたくさんの情報を見られる時代ですが、実際に体感してみないと分からないことって、本当に多いんですよね。特に人との出会いや現場の空気感なんかは、やっぱりオフラインじゃないと伝わらない部分があります。
インスタではすごくキラキラしている人でも、実際に会ってみたら全然印象が違うこともあるし。だからこそ、「この人に会いたいな」とか「この世界を見てみたいな」と思ったら、ぜひ勇気を出して一歩踏み出してほしいです。会いに行ってみる、現場を体験してみる、そうやって「実践する」ことが、すごく大切だと思います。
もちろん、SNSも今の時代とても大切です。だけど、それと同じくらい「オフラインで動くこと」も忘れないでほしい。僕自身も、今でも常に「まずやってみる」「感じてみる」という姿勢を大事にしています。これは人に言っているようで、自分にも言い聞かせているんですけどね。
とにかく、少しでも興味があるなら、まずは動いてみてください。それが、何かのきっかけになると思います。
まとめ
日本からニューヨークへと渡ったSeiyaさん。言葉や文化、ビザといった数々の壁を乗り越えて、自分らしいスタイルを貫きながらキャリアを築いてきました。
チャンスを逃さない柔軟さ、周囲との信頼関係、そしてSNSでの発信力を武器に、多様性あふれる現場でたしかな存在感を発揮しています。
「まずやってみる」「感じてみる」そんな行動力こそが、未来を切り拓くカギとなる。Seiyaさんの姿勢は、今まさに夢に向かっている美容学生たちに、大きなヒントと勇気を与えてくれるはずです。
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